木質バイオマスと鉄バクテリアを用いたリンの水中からの回収と利用
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地下水や浸透水の流入が多い河川,水路,沼沢などの自然水域の底部では,しばしば底質とともに赤褐色の浮泥状または膜状の柔らかな塊がみられますが,これらの多くは鉄バクテリアの作用によって集積した鉄バクテリア集積物です。
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ほ場整備などの農地整備が行われた場所では,排水路を以前よりも深く掘るため,水路等に地下水や浸透水が多くなり,鉄バクテリア集積物の堆積に苦慮している事例が見られることがあります。こうした地域では,鉄バクテリア集積物はポンプやパイプの詰まりの原因となるほか,雨天時には拡散して濁り水の原因となるため,忌避される傾向にあります。
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鉄バクテリア集積物はリン吸着能を持つので,水中からのリンの回収や循環利用に重要な役割を果たしうると考えられます。
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しかしながら,現在有効な利用がなされていません。
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その理由は,鉄バクテリア集積物は浮遊性に富むので容易に水流で流されること,また,鉄バクテリア集積物の下部は嫌気的なヘドロである場合が多いので,鉄バクテリア集積物のみの選択的な収集が困難である事などが挙げられます。
木質バイオマスと鉄バクテリアを用いたリン資源の循環利用(概念図)
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鉄バクテリアの生理・生態はまだ不明な部分が多いですが,木質バイオマス(針葉樹間伐材)を用いることによって,鉄バクテリア集積物をリン酸肥料または水質浄化材として利用できる形態で収集できることがわかりました(詳細は,武田・宗村(2008)環境技術,347-351)。
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なお,針葉樹バイオマスには,窒素、リンをほとんど含まず,中空の細長いパイプ状細胞である仮道管が木質組織全体の約97%を占めるので,細かく破砕すると大きな比表面積が期待できるという特徴があります。